SUPER GT インサイドレポート

2009.04.01 更新

雨がやむ方向に賭けた

明けて日曜日の岡山国際サーキットは夜半からの雨の影響が残り、セミウエットというコンディションでのフリー走行となった。走行開始の午前9時20分、まずはビルドハイムが溝の浅いインターミディエイトタイヤを履いてコースイン。時折小雨が降る中、セッション後半伊藤に交代したENEOS SC430は順調に走行。終わってみれば1分36秒306と、2番手のROCKSTAR 童夢 NSXにコンマ3秒差をつけて、今週2度目のトップタイムとなった。

第1戦岡山

「クルマに大きな問題もなかったので、基本的にコンディションに合った浅溝タイヤをつけてのフィーリングチェックをしました。決勝の第2スティント用に深溝(レインタイヤ)、浅溝をそれぞれ皮むき(熱を加えることによって、新品タイヤのゴム部は化学変化を起こす。それを一度冷まして使うと、グリップダウンが少なく安定した性能が得られるため、新品タイヤは本番で使用する前に必ず数周走って熱を入れておく。タイヤ表面が削れるので「皮むき」という)したぐらいです。天候の変化だけが気がかりでしたが、コンディションにタイヤさえ合っていれば大丈夫で、天候の大きな変化さえなければ、クルマ的にもこのままいじらずに行こうかという手応えがありました」

そうしてLEXUS TEAM LeMans ENEOSは万全の態勢で決勝を迎えていた。ところが、13番グリッドから怒涛の追い上げに向け高まる周囲の期待とは裏腹に、スタートを目前にして大粒の雨が落ちてきた。その雨もすぐに小康状態となり、ウォームアップ走行を終えたENEOS SC430はスタートドライバーを務めるビルドハイムの手でダミーグリッドに向かった。

スタート進行が続く間、チームでは天候に関する情報を収集。雨が上がる方向と読んだ土沼広芳監督以下チームスタッフは逆転劇を信じ、最後の最後にグリッド上でタイヤを深溝タイプから浅溝タイプへ交換する。

「グリッドへ向かうラップでGT300クラスのマシンがクラッシュしたりしていたので、ビヨンも当初は深溝でのスタートを考えていたようでしたが、グリッドにいる間に雨が降る気配がなかったので、みんなで相談して浅溝を選択しました。もっと前のグリッドなら作戦も違ったでしょうけど、13番手からのスタートだけに思い切った作戦で行こうと、浅溝に賭けたんです。ただ、路面は濡れていましたから、ビヨンには最後に“本当に気をつけろよ!”とは言いましたね」

こうして午後2時ちょうど、セーフティーカーの先導(各車がコース状況を把握できるように、速度を落として走る。先導中は追い越し禁止)によって82周の決勝レースがスタートした。しかし、そのころから空は暗さを増し、再び大粒の雨がサーキットに降り注ぎ始めた。チームの読みとは反対となってしまったのである。セーフティーカーは2周でコースを離れ、3周目(セーフティカースタートの場合、セーフティーカーが先導した周も周回数に含まれる)から水煙の中で本格的なスタートが切られた。

「リスクを覚悟してビヨンを送り出したのですが……」と伊藤。その3周目(実質的なレーススタート)の第1コーナーで#36 SC430が#1 GT-Rに追突され、いきなり2台が後退するなど波乱の幕開けとなった。水が増えていくコース上で浅溝タイヤを履いたビルドハイムはコース上に必死に留まるも、ハイペースでの周回はできず苦戦。10~11番手とポジションは上がったものの、深溝を履いた周囲のマシンとはラップタイムで2~3秒もの差があり、ENEOS SC430は徐々に単独走行となっていってしまう。

幾度となく飛び出しそうになり、「もう無理だ!」と無線で叫ぶビルドハイムだったが、この段階でピットインすれば勝負権は完全になくなってしまう。雨がやむ可能性も捨てきれぬ上、後半スティントでの燃費、そしてドライバーひとり当たりに許された最大周回数(全周回数の3分の2未満。今回は54周)の問題もあり、山田エンジニアは断腸の思いでビルドハイムに「コースに残ってくれ」と伝えるしかなかった。

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