SUPER GT インサイドレポート

2009.04.01 更新

結果は残念だったがそれ以上に大事なものを得た

そしてようやく28周目、最大周回数の問題も、残り周回での燃費の問題もクリアできたENEOS SC430は、ようやくピットへ。ビルドハイムから伊藤へとドライバー交代をすると同時に給油、そして深溝のレインタイヤが装着される。残り周回は50周以上。「なんとかチームにポイントを持ち帰りたい……」という思いを胸に、伊藤がコースインしていった。

「コースに出てみたら、まだまだ雨が強くて。タイヤが温まりきっていない状態では、深溝のレインタイヤと言えども、すぐにハイドロプレーニング(水を被った道路を高速走行したときに、タイヤが接地面から浮き上がる現象。ステアリングもブレーキもきかない状態になる)を起こしてしまうような危険なコンディションでした。この状況の中、ビヨンは良く浅溝で踏ん張ったなと、どんなにツラかっただろうなと思いました。きっと僕にバトンを渡さなければならないと、我慢の走りをしていたはずだと。彼にとってはフラストレーションの溜まる、バトンをつないだというだけのレースになってしまったと思います」

しかし、ここから伊藤はジリジリと追い上げていく。省エネモードのエンジンマップを選択し、さらにコーナー進入では早めにアクセルを離すなど、チームから燃費を良くするための指示が飛んだが、限られた条件の中で、伊藤は上位陣を上回るペースで周回を重ねていく。

「順位争いという部分ではスティント序盤はトップ10圏外でしたから、気持ち的になかなか難しい部分がありましたが、待っている間にメカニックが“ポイント獲りましょうね”と笑顔で声を掛けてくれた。普通なら、あんな状況ではうなだれてしまうものですが、それでもスタッフが前向きな気持ちを持っていることが分かったので、なんとかポイントを獲りたいと。クルマに速さがあるのに、予選でもうまく行かず彼らをガッカリさせてしまったという悔しい気持ちもありましたからね。自分に与えられたパートは精一杯やろうと思っていたんです」

ピットアウト直後は総合19番手あたりまでポジションを下げていたENEOS SC430だったが、この伊藤の頑張りと雨がやや少なくなったというコンディションの良化もあり、50周目についに念願のポイント圏内となるトップ10に浮上。しかし、この時点で前のマシンとの差は1分以上と大きく、それ以上の躍進はならず。ENEOS SC430の開幕戦は10位、1ポイント獲得でチェッカーという結果になった。

第1戦岡山

「プッシュしたいという気持ちを抑えつつ、燃費の問題もあって、ツラいレースではあったけれど、なんとかポイントを持って帰ることができて良かった。一時雨が少なくなったものの、後半雨がひどくなったとしたら、その時点でタイヤの溝が残っていなければ大変なことになるので、ストレートでは常にイン側の水の多いところを選んで走るなど、タイヤをセーブしながらの走行で耐えるしかなかった。それでも、1ポイントを獲れたことがうれしい」と伊藤。「結果的に不完全燃焼と言えばそのとおりのレースになってしまいましたが、クルマにはドライでもウエットでもトップを争える速さがあることを確認できた。それは自分たちだけじゃなく、ライバルチームにも“今年のENEOS SC430は要注意だな”という認識を植え付けることもできたと思う。公式スケジュールの中での組み立てや判断などの部分で課題は残りましたけれど、新体制で1レース戦ってみてチーム全体が良くなっているという手応えを得られたことが何よりでした。すべてがマイナスというようなレースでは決してなかった。開幕戦という特別なイベントを勝ちたいという気持ちはありましたが、たぶんチームも周囲の人たちも“これなら、今年のENEOS SC430はやってくれそうだ”と思ってくれたのではないでしょうか」

次戦は伊藤の地元、鈴鹿サーキットが舞台。ENEOS SC430の戦いに注目が集まることになりそうだ。

取材・文/田口朋典 写真/上尾雅英

第三者の目から見たENEOS SC430

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