
2009.09.30 更新

ピットアウトした伊藤は、いきなり#35 SC430とのバトルに遭遇する。しかし、「予定よりスティントが長くなったこともあって、タイヤを持たせなければならない以上、いきなりタイヤに負担をかけることはできない」と無理をせず、#35 SC430を先行させ、10位でレース中盤を進めた。「接触の影響か、ボンネットが多少浮いている部分があったので、空力的な悪影響があったのか、低速コーナーではまったく気にならないものの、高速コーナーでフロントのフィーリングがいまひとつ」と振り返った伊藤だが、タイヤを労わりつつ、それでも目前の#35 SC430とのギャップを1秒前後の射程距離に留めながらの走行が続く。
「5月の富士でのレースのとき並みに気温が上がったことで、僕もビヨンもミディアム系のタイヤを選んでスタートしたのですが、ビヨンが序盤追い上げるのにタイヤを使ったので、ピットインが早くなってしまいました。ただ、僕のスティントで周回数が多かったとはいえ、序盤抑えていたので問題ありませんでした。本来、セーブして走ることは嫌いなんですけど……仕方なかった」という伊藤はタイヤを温存しつつ、じっくりと#35 SC430の消耗を待つ。そのチャンスが訪れたのは47周目だった。
「残り周回が減ってタイヤ的にも目処がついてきたころに、ちょうどピットから“これから前方にGT300の渋滞が出始めるから、チャンスだよ!”と健二さんの無線が入って。そのとおり、プリウスコーナーでGT300に詰まって#35 SC430が失速したところで、うまく前に出ました」
この時点でENEOS SC430は6位。レースは残り20周という状況だったが、ENEOS SC430の約7秒前方には#3 GT-Rが。伊藤は新たなターゲットをこのGT-Rに定め、じりじりと間合いを詰めていく。
「#3 GT-Rとはそれほどペースに差がなかったんですが、こちらはもう残り周回数とタイヤのライフの目処がついていたので、もうひたすらプッシュしていけました。抜くタイミングが難しかったんですが、向こうのタイヤがもう消耗し始めていたので、抜くのは時間の問題だなと」
残り10周の段階でENEOS SC430と#3 GT-Rとのギャップは約2.7秒。しかし、再びGT300による渋滞に引っ掛かった#3 GT-Rに迫ったENEOS SC430は、残り5周となった61周目の1コーナーで狙いどおりGT-Rを仕留め、5位に浮上。だが、この時点で4位の#17 NSXとのギャップは10秒以上と大きく、最終的にENEOS SC430は5位でチェッカーを受けた。
「スタート直後の接触に関しては、ビヨンの位置取りからいけば、あそこにノーズを突っ込まなければならなかっただろうし、ビヨンばかりに非があるとは思えませんが、いまのGTの判定基準は厳しいですから、ペナルティーが出たことは仕方ない。ただ、朝のフリー走行での好調さ、速さを考えれば、普通に抜いていけるクルマになっていたと思いますから、リスクを冒してまでポジションを死守する必要はなかったと。そう考えると、僕を含めチーム側が、もう少しビヨンのメンタル面もコントロールしてあげていれば良かったのかなという気持ちはありますね」とゴール後の伊藤。「ああいうことがレース序盤に起こったものの、5位というポジションで終われたことはそれほど悪いレースではなかったなと思います。しかし、このところ安定してクルマが速くて、チームスタッフやメカニックが自信を深めつつある中でなんとか結果に結びつけたいという気持ちがあったのに、今回こういう展開になってしまったことが非常に悔しいです。早くチームのみんなに勝利の美酒を味わってもらいたい」と振り返った。今季も残るは2戦。残念ながらチャンピオンへの可能性は限りなく低くなってしまったが、次戦のオートポリスでは会心のレースを目指していく。
取材・文/田口朋典 写真/小笠原貴士
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