Daisuke Ito Inside Report 伊藤大輔インサイドレポート


いままでを大きく上回る手応え

 今季もENEOSのスポンサードを受け、激戦のスーパーGTを戦うLEXUS TEAM Le Man ENEOS。黒澤琢弥新監督のもと、チームは体制をより一層強化。ENEOS SC430はシルバーのラインが入るなどデザインが若干モディファイされたが、おなじみのENEOSオレンジをベースにしたカラーリングを身に纏う。これを駆るのは、伊藤大輔/ビヨン・ビルドハイムの不動のドライバーコンビ。開幕前のテストでも好調な仕上がりを見せて迎えた2010年スーパーGTシリーズ開幕戦の舞台は、伊藤にとってホームコースでもある鈴鹿サーキット(三重県)だ。

 その開幕を前に、伊藤は過去2年を大きく上回る“手応え”を感じていたという。
「今年はチーム全体がシステムとしてきちっと動いているように感じています。土沼(広芳)さんが総監督として全体を統括し、琢弥さんが監督として現場をまとめ、(山田)健二さんはクルマ作りに専念し、スタッフは個々の仕事に集中できるようになった。チームがシステム化されたことで、僕たちドライバーも今年はすごくやりやすくなったんです。テストでも良かったし、おそらく周囲も今年の僕たちを“去年までとは違う”というふうに見ていると思いますよ」

 2008年、前年のチャンピオンとしてトヨタに電撃移籍した伊藤。しかし、FRのSC430へのスイッチに伊藤は大きく戸惑まった。

 「思うようにセットアップが進まない。自分の手足のようにSC430を走らせられない……」と、自らの苦しみを口にすることも幾度となくあった。開幕戦、第3戦、第4戦とポイントを獲得しても、「結果としてある程度のポイントを獲ったという感じで、レースをして勝ち獲った、というものではない」と、納得のいかない表情を見せていた。しかし、徐々にSC430をつかみつつあり、これからと思われた矢先、DVD収録中のアクシデントでまさかの負傷。ケガの治療とリハビリに時間を費やし、復帰を果たしたのはシーズン最終戦の富士。ここで見事3位表彰台に立ち、自らの手で復帰戦を飾り、翌年につながる形で08年を終えた。

 「いま思えば、ケガをした時点でもまだクルマのことは理解しきれていなかった。レーシングドライバーですから、ある程度のパフォーマンスで走らせることはできる。けれど、一番辛かったのは、どういう方向性でセットアップすれば良いのかが分からないということ。それが僕たちドライバーだけではなく、チームもそういう状態だったために、自分がクルマに求めるものが間違っているのだろうか、という迷いがずっとあったんです。だから、いまそこにあるクルマをできるだけ速く走らせる、ということしかできなかった。けれど09年、健二さんがエンジニアとしてチームに加入して、クルマがまともに走るようになったことで、自分が求めていたものが間違っていなかったと確認することができたんです」

改革の09年

 チーム ルマンに移籍しての初年度、“ベストなSC430”という像が描けなかったという伊藤だが、山田エンジニアの加入によって状況は大きく変わり、開幕前のテストからENEOS SC430は常に上位につけることのできる速さを身に付けた。

 しかし、09年のENEOS SC430は表彰台に立つことは叶わなかった。毎戦のように公式練習などでセッショントップを奪うものの、予選では決勝を睨んでハード系のタイヤをチョイスする戦略も影響し、ポールポジションには届かず。決勝でもスタート直後の波乱でポジションダウンを喫したり、セパンでの駆動系、700kmでの電気系など、予期せぬトラブルでチャンスを失ったりするケースも多く、中盤戦までレースをリードし“ついに初優勝か!?”と思われた第5戦SUGOでさえ、降りが急に強くなった雨によって、優勝はLEXUS TEAM Le Mans ENEOSと伊藤の手から滑り落ちていった。

 「昨シーズン、クルマは安定して速さを発揮できるようになりましたが、いろいろな不運やミス、トラブルが相次ぎ、結果としては一度も表彰台に立つことなくシーズンを終えなければなりませんでした。しかし、それらは単なるアンラッキーだけでは片付けられないというか、何かしら原因があったと思います。きちっとセットアップやメンテナンスをしてやれば、クルマは物理的に速く走れるようになる。けれど、それ以外の部分の歯車が噛み合っていなかったんじゃないかと。チームにはミスがときどきありましたが、クルマを速くすると同時にチームを強くするという目標がある中で、速くなったクルマにチームが追いついていなかったのかもしれません。加えて、セットアップの方向性やマシン整備のやり方が大きく変わったことで、それを触るスタッフもそれまでとは違うものを求められるようになる。結果、チームとしていろいろなデータや経験が08年から09年へは引き継ぎができない状況になっていたと思います。言い方を変えれば、“改革”の年でした」

 伊藤は昨年の不振をこのように分析していた。だが、こうした不安を払拭したのが今季のレクサス チーム ルマン エネオスだ、とも伊藤は言う。

 「昨年はチーム全体に余裕がなかったように感じていました。けれど、今年は前年のデータなどを引き継いだ上で、そこをスタートに物事を進められるようになった。それによって、昨年できなかった、“速さを自信に変える”という大事なことができているように思うんです」

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