Daisuke Ito Inside Report 伊藤大輔インサイドレポート


前半の頑張りがカギ

 迎えた今季開幕戦の鈴鹿で、この伊藤の言葉は現実の物となる。

 土曜の公式練習の中盤、1セット目のタイヤのまま伊藤のドライブで1分54秒410をマークしたENEOS SC430は、このセッション2番手と幸先の良いスタート。コンディションが悪く、滑りやすい路面にライバル陣営が苦しむ中、決勝を見据えたセットアップやタイヤ評価を順調にこなして予選1回目に臨む。ここではまず、ビルドハイムが基準タイムをクリアすると、伊藤がENEOS SC430のコクピットに。あくまでグリッドはノックダウン方式の予選2回目に決するため、伊藤は開始30分のところで1分55秒788をマークしてこの時点での4番手に浮上したが、以降はセットアップに終始して、このセッションを6番手で終えた。

 そして予選2回目。最初のS1では伊藤がアタックを担当、1分53秒610をマークし、6番手でS2進出を決めると、続くS2ではビルドハイムがアタック。1分53秒588を叩き出し、今度は2番手で最終のS3へ駒を進める。このS3でアタックに使用するタイヤで翌日の決勝をスタートしなければならないことから、チームはハードタイヤをチョイス。タイムの出にくいタイヤながらも、伊藤は終盤に1分53秒442をマークして4番手。決勝の上位争いが可能な2列目4番グリッドを獲得した。

 翌日曜は夜半に雨が降ったものの朝には上がり、徐々にコンディションは回復。しかし、決勝がスタートする午後2時を前に黄砂混じりの雨が時折ポツポツ落ちてくるなど、風雲急を告げる中でのスタートとなった。ENEOS SC430のスタートドライバーはビルドハイム。「タイヤの摩耗も悪くないはずだし、なんとしても周回数の半分となる26~27周はこなしてほしい」とビルドハイムにタイヤマネージメントを託した山田エンジニアだが、「それが実現すれば、後半の僕のスティントでソフト系のタイヤが使える可能性が出てくる」と、グリッド上で伊藤も怪しげな雲行きを見上げながら、まもなく始まろうとする決勝に思いを馳せていた。

優勝が見えてきた!

  午後2時、決勝がスタート。西コースで大粒の雨が降る中、ビルドハイムは落ち着いた滑り出しだ。1周目にひとつポジションを下げて5番手とするも、2周目には2台がコースアウトしたことで3番手に浮上を果たし、 #38 SC430、#24 GT-Rらとともに集団での2番手争いを演じる。

 激しい攻防の中、9周目に周回遅れに詰まって行き場を失ったところを突かれて5番手に下がったが、タイヤを労わりながらこれまで以上に落ち着いた、安定した周回を重ねていく。アクシデントによってセーフティカーが入ってもその状況は変わらない。ビルドハイムは#24 GT-Rや#1 SC430らとの激しいバトルを演じながら、ピットインし始めたライバル陣営を後目にさらに周回を重ね、25周目には#24 GT-Rに次ぐ2番手に上がった。

 チームからの無線での問いかけに、「タイヤはまだ問題ない。もう少しいける!」と答えたビルドハイムは、チームの期待に応えて31周終了時点までピットインを引っ張ることに成功する。これを受けて、黒澤監督と山田エンジニア、伊藤はピットアウト後のタイヤの温まりに苦戦するライバルたちの状況を踏まえ、予定どおりにソフトタイヤで後半を戦うことを決定。チームは迅速な作業で伊藤をコースに送り出した。

 3番手でレースに復帰したENEOS SC430だが、温まりの良いソフトタイヤに後押しされたアウトラップの速さに、伊藤は「このあとピットインする#24 GT-Rの履くヨコハマタイヤがどれほどの温まりの早さ、ラップタイムを刻むのかは読めないが、これなら事実上のトップに立てるかもしれない。何としてもギャップを詰めるんだ!」と力走。場内アナウンスも「ENEOS SC430の伊藤、ついに悲願の優勝か!?」と叫ぶ。