Daisuke Ito Inside Report 伊藤大輔インサイドレポート


「やられた!」

 ところが、34周終了時点でピットインしてきたトップの#24 GT-Rは予想外のタイヤ無交換作戦を敢行。ピット作業時間を大幅に短縮してトップでコース復帰を果たす。チームから逆転の可能性を伝えられていただけに、伊藤のショックは大きかった。

 「130Rのあたりまでは、『この周で逆転するぞ!』と言われていただけに、その直後に健二さんから無線で『やられた! 24号車はタイヤ無交換だ』と聞かされたときはガックリきました。勝負を掛けるべく、レース終盤に苦しくなることを覚悟の上でソフトタイヤを選んだんですが、まさか無交換とは……。しばらくは向こうのタイムなどを見ていましたが、こちらと遜色のないタイムで走り始めたので、悔しいけれど無理はせず、自分のタイヤを最後まで持たせる走りに切り替えざるを得ませんでした」

 終盤、同じくタイヤ無交換作戦で追い上げてきた#100 HSV-010に詰め寄られたENEOS SC430だが、「僕がコーナーで周回遅れに詰まり、向こうはそれをストレートでかわすというめぐり合わせだったために真後ろまで来られたけれど、自分も冷静だったし、そこで無理をしてタイヤを傷めることなく、かつ相手に隙を与えぬ走りができた」と粘走。最後は#100 HSV-010を突き離し、2位でチェッカー。優勝車#24 GT-Rには約9秒届かなかったが、08年の最終戦富士以来となる、ENEOS SC430ベストリザルトの2位表彰台へと導いた。

 「ENEOSに久しぶりの表彰台をプレゼントできてよかった。2位ということで、手放しで喜ぶことはできないけれど、自分たちのできる範囲の戦い方としては、きちっとこなすことができたという満足感と、ホッとした気持ち、そして残念な気持ちが混ざっている感じですね。しかし、開幕戦での2位表彰台ということで、これから1年を戦っていく上で、チームのみんなに自信をもたらすようなレースだった。自分たち以上に調子の良かったライバルもいる中で、レースの戦い方、戦略や正確さ、そして“運”を呼び込むことができた部分で、チームが勝ち獲った2位表彰台なので、とても意味のあるレースができてうれしい」

 長かった雌伏の時を終え、トップチームへのステップを上がった感のある今季のレクサス チーム ルマン エネオス。表彰台でシャンパンを浴びるふたりのドライバーとともに、ENEOS SC430は万全の体制でのシーズンスタートを切った。だが、さらなる上位、すなわち優勝を目指しての今季の戦いは始まったばかりだ。

文:田口朋典(Tomonori Taguchi)
写真:小林直樹(Naoki Kobayashi)、上尾雅英(Masahide Kamio)

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