
灼熱のマレーシア・セパンラウンドを4位で乗り切ったLEXUS TEAM LeMans ENEOS。ENEOS SC430は開幕戦からの連続入賞を続け、現在ポイントランキングは40ポイントでトップ。伊藤大輔、ビヨン・ビルドハイムの両ドライバーをはじめ、チームスタッフ全員が高いモチベーションをキープし、チーム力の高まりを感じる中で、シリーズ後半戦の緒戦となる第5戦スポーツランドSUGOを迎えた。
アップダウンに富んだ山岳コースであるSUGOは、テクニカルなインフィールドとハイスピードな外周部分で構成され、非常にチャレンジングなコースだが、ウエイトハンデの影響が大きなサーキットとしても知られている。ENEOS SC430のSUGOでのウエイトハンデはGT500クラストップの80kgだ。
「これほど重いウエイトを積むのは、テストも含めて初めてです」と金曜日にサーキット入りした山田健二エンジニア。
「ただ、前回セパンでも効果があった低重心化などの良かった部分を踏襲しつつSUGOでのテストデータを活かし、持ち込みのセットアップを施してきました。また、7ポストリグなどチームのファクトリーにある施設をフルに使い、メカニカルな部分でのニューアイテムも投入してきました。重くなってツライ部分をなんとか跳ね返そうというわけですが、それがうまくいけば、良いパフォーマンスを発揮できるはずです」
ニューアイテムの詳細については明かされなかったが、土曜朝の公式練習でのポジションとパフォーマンスによって、今週末の戦い方が決まるという。SUGOでの予選はスーパーラップ(SL)方式。まず予選1回目を行ない、ここで上位8番手以内に入ればSL進出。その8台はSLのタイム順によってスターティンググリッドが決まる。公式練習でトップ10に入れないようなら、スーパーラップ進出を狙わず、決勝のためのセットアップに時間を使おうというわけだ。
「たとえSLに進出できても、トップ3に入るというのは不可能に近い。加えて、次の鈴鹿はノックダウン方式(S1=セッションで下位3台が脱落・11~13番グリッドが決定、上位10台がS2進出、S2で下位3台が脱落・8~10番グリッドが決定、上位7台がS3進出、S3で7台がポールポジション~7番グリッドを争う)の予選となるので、両方のドライバーがアタックをしなければいけないのですが、ビヨン(ビルドハイム)は今季ここまでニュータイヤでのアタックをしていないし、これほど重い状況でのアタックはまったく経験がないので、鈴鹿の予選に向けて予行演習的な意味合いを含め、今回の予選アタックはビヨンにやってもらいます」
迎えた土曜のSUGOは真夏を思わせる暑さ。すでに気温33℃、路面温度44℃という中、公式練習は午前9時に始まった。約7分を経過したところで、いつものラウンドなら、エース伊藤大輔からコースインするところだが、今回はアタック担当のビルドハイムがENEOS SC430のステアリングを握り、ピットを離れた。
早々に1分18秒台に突入しているマシンもあるが、ENEOS SC430は1周目1分24秒211で4番手とすると、2周目には1分21秒111で3番手に。タイヤが温まり始めた翌周には、1分18秒193でトップに躍り出た。
ピットでこの状況を眺める伊藤のにこやかな表情がカメラを通じて場内のモニターに映し出される中、ピットイン&アウトを行ない、セットアップに修正を加えたビルドハイムはさらに1分18秒132へとタイムアップ。他車のタイムアップでポジションこそ3番手となっているが、ENEOS SC430の車名は常にモニターの上位に位置している。
この後も細かいセットアップの修正をビルドハイムが行ない、伊藤がステアリングを握ったのはセッションが1時間経過してから。
「ビヨンが予選用のセットアップをしていたので、クールスーツを搭載していない状態のクルマで、ロングランのフィーリングをチェックしました。5周目くらいまでは全然平気かなと思ったんですが、やっぱり10周くらい連続周回していると結構ツラかったです。クールスーツのありがたさを再認識しました(笑)」
そう苦笑いしながら振り返った伊藤だが、ロングランでも1分19秒台とまずまずのラップタイムで周回を重ね、公式練習が終了した。
結局、このセッションのENEOS SC430は7番手というポジションとなったが、ポイントで競っており、同様に重いライバルマシンたちは軒並みタイムが出ていないこともあり、このセッションを終えて黒澤琢弥監督以下、チームの方針は「スーパーラップ進出を狙う!」ということで一致した。トップハンデとはいえ、守りの戦いをするのではなく、あくまで攻めの戦いをする、というわけだ。
そして予選1回目。まずは伊藤が基準タイムをクリアしつつ、混走時間帯にクルマのバランスをチェック。その後、ビルドハイムがステアリングを引き継いだが、ここでもクルマのセットアップとフィーリングの確認のみで、タイムは1分19秒707、ポジションは13番手に留まるも、残るラスト10分でのタイムアップに向け、充分な準備が整った。
アクシデントなどで赤旗中断があったことから、GT500の専有時間帯が始まったのは午後1時40分。セッション開始から約3分待機したビルドハイムがいよいよアタックに向かう。いつもとは異なり、ピットでその様子を見守る伊藤。
ピットアウトしたビルドハイムは、まずタイヤを温めると、最初のアタックは1分17秒402で4番手。これもまずまずのタイムだが、翌周に1分17秒296とさらにタイムアップ。ライバルたちのタイムアタックが続く中、一時は7~8番手まで下がっていたENEOS SC430のポジションはこのアタックで5番手に浮上。結局、ビルドハイムは見事5番手で公式予選1回目をクリア。トップ8のみに許されるSL進出権を確保することに成功した。
午後3時50分から始まったSLでは4番目の登場となったビルドハイム。まだ暑さの残るコース上で渾身のアタックを披露するが、惜しくもシケインと最終コーナーでタイムをロスし、タイムは1分17秒415。ENEOS SC430は8番グリッドから明日の決勝を戦うことになった。
「SLはちょっと残念だったね。シケインの縁石でボトミングして、クルマが跳ねてしまったんだ。最終コーナーも同様の状況で、完璧なアタックにはならなかった」と悔しそうな表情を見せたビルドハイム。「だけど、SUGOに来る前のミーティングでは実際にはもっと苦戦して、予選10~12番手という予想も出ていたくらいだから、それを考えれば予選8番手をポジティブに考えたいね」
一方、伊藤は「いや~、久々に今日はゆっくりさせてもらいました。ヒマでしたね(笑)」。「朝の公式練習では良い滑り出しかなとは思ったんですが、最終的には80kgという重さをどうタイムにつなげていくかが重要で、そのあたりの確認作業などをやりました。完全な決勝セットでロングランをできたわけではないので、明日のフリー走行でも確認することが残っています。タイムはそこそこ出ているものの、自分の判断基準に最終的に照らし合わせてみると、タイヤを労わりつつ安定したラップを刻めるかというと、残念ながらそのレベルには達していないですね」と、翌日の決勝は簡単な戦いにはならないだろうと気を引き締めながらSUGOを後にした。