
必勝体制で臨んだツインリンクもてぎでは、予選でフロントロウを獲得するも、予想外のペナルティによって悲願のタイトルへの望みを失ってしまったLEXUS TEAM LeMans ENEOS。ペナルティの原因となったミスを犯したビヨン・ビルドハイムはもちろんのこと、伊藤大輔もまた、最終戦を終えたあとは「ある意味、心の奥底に傷を負っていた状態」だったという。
「自分の悔しい気持ちはもちろん、ファンの方々やチームスタッフ、TRD、トヨタ、そしてENEOS関係者など、ここまで支えて来ていただいた方々に申し訳ない思いでいっぱいでした」と言う伊藤、そしてチームスタッフたちにとって、フォーミュラ・ニッポンとスーパーGTを同時開催するという、史上初の試みとして大きな注目を集める『JAF Grand Prix FUJI SPRINT CUP 2010』は、最終戦での雪辱を果たす絶好の機会であった。
『JAFグランプリ』の名が冠されたこのイベントは、通常別個に開催されているFニッポンとGTという最高峰シリーズを一度に楽しめる上に、レース距離100kmのスプリントレースを土日に1レースずつ行なうという、通常とは大きく異なるレースフォーマットを採用している。イベント色の強い大会ではあるものの、通常1台のマシンをふたりのドライバーがシェアして300kmという長丁場を戦うスーパーGTシリーズ戦に対し、今大会ばかりは各々のドライバーがタイヤ交換もピットインもない、22周の1本勝負に挑むことになる。
このイベントに向け、山田健二エンジニアは「キャンセルになった第7戦富士用に準備していたセットアップや仕様の確認と、来季に向けたデータ収集ができれば」とエンジニアリングサイドとしての目標を携えて来ていた。ちなみに、今大会の決勝レースはスタンディングスタートとなるが、通常ローリングスタートとなるスーパーGTではマシン自体がそのようなスタートをあまり想定して設計されていないことから、スタートでの駆動系に対する負担増などが心配されていたものの、「TRDも対策パーツを用意してくれていますが、路面温度が低い時期ですし、それほどタイヤが食いつかないのであれば、スタンディングスタートでも問題はないだろうと思います。ただ、短いレースなのでスタートの善し悪しが勝負のポイントになるでしょうね。そのあたりはドライバーに頑張ってもらわないと」と山田エンジニアは語る。
実はこのレースには、山田エンジニアにとってさらにふたつの目標があった。そのひとつは、今大会の上位入賞者に設定された賞金だ。各レースの優勝者に300万円、2位に150万円、3位に100万円という、通常のシリーズ戦にはない高額な賞金が設定されている。「満額いただいてチームみんなのボーナスにします(笑)」と笑顔で語る山田エンジニア。そして、もうひとつの目標については土曜のレース1終了後に明らかになる。
今回はふだんと異なり3日間での開催となるため、金曜に公式練習と公式予選が行なわれる。走りはじめの公式練習は午前10時30分からの50分間。ENEOS SC430は、まずは伊藤がステアリングを握りコースイン。3周目に早くも1分36秒932と、その時点での3番手タイムをマークした。翌周にピットインした伊藤は、セットアップに修正を加えつつ、徐々にタイムを上げていく。8周目には1分34秒665をたたき出した伊藤は、ENEO SC430をタイミングモニターのトップに押し上げるとピットへ。上々の滑り出しだ。
セッション後半からはビルドハイムにドライバー交代。同様に34秒台を連発したビルドハイムは、残り数分となったところで1分34秒472をマーク。結局このタイムがENEOS SC430にとって公式練習でのベストとなり、このセッションを5番手で終える。
山田エンジニアが「基本的に各ドライバーの好みに合わせてセットしました。いつもは両方のドライバーが互いにロスなく走れるようなセットアップをするのですが、今回はそれぞれが予選アタックをし、それぞれがスプリントを戦うので、個人の好みに合わせてセットを進めました」と言うように、いつもとは異なる作業の進め方ながら、順調に公式練習を終えた。
「クルマはすごく安定しているし速いよ。状況次第でポールポジションが争えるはずだ」とビルドハイムが走行後コメントしたように、公式練習で充分な手応えを得たチームは、午後2時35分からの予選1回目を迎えた。この予選1回目にアタックしたドライバーが土曜のレース1を、その後に行なわれる予選2回目をアタックしたドライバーが日曜のレース2を走るレースフォーマットだ。
今大会、GTマシンは9セットのタイヤを使うことができることもあり、20分間のこのセッションで、チームは他チーム同様2セットのニュータイヤを投入し、上位グリッドを狙う戦略を採る。予選1回目にコースインしたビルドハイムは、まず1セット目の2周目にいきなり1分33秒863をたたき出し、モニターのトップに立ったところでピットイン。2セット目のニュータイヤに履き替えた。残り10分の段階では依然としてトップにいたENEOS SC430は、2セット目のアタックで1分33秒772とタイムを上げるものの、後半に入るとライバル勢がタイムアップを始め、結局ビルドハイムは僅差ながら6番手で予選1回目を終えた。
その1時間後の午後3時35分、今度は伊藤が予選2回目に挑む。コースインした伊藤は、1セット目のニュータイヤで3周目に1分34秒326をマークして3番手に。その後2セット目のニュータイヤに履き替え、セッション終盤に1分33秒904にタイムアップし4番手に浮上。さらに渾身のアタックを続けた伊藤は、1分33秒705までタイムを削ることに成功するが、1分33秒569をマークしていた#12 GT-Rにはわずかに及ばず、2番手となった。
「もちろんポールポジションを狙っていただけに残念ですが、フロントロウからなのでチャンスは充分にあるはず。うまくスタンディングスタートを決めて、良い形で1年を締めくくりたい」と伊藤。この結果、ENEOS SC430は土曜のレース1を6番手から、日曜のレース2を2番手から臨むこととなった。