
最終戦までタイトル争いを展開も、あと一歩悲願達成に手が届かなかった昨年のLEXUS TEAM LeMans ENEOS。その無念を2011年シーズンに晴らすべく、車名も“ENEOS SUSTINA SC430"と一新され、マシンの整備など、オフの間もスタッフたちは地道な準備を行なってきた。さらにチームは、伊藤大輔のチームメイトとして、若手成長株の筆頭ともいうべき大嶋和也を新たに迎え入れた。GT300クラスでチャンピオン経験を持ち、GT500にステップアップ後の2シーズンも毎年1勝をマークしている大嶋の加入は、チームにとって大きなプラスであり、伊藤にとっても良質の刺激となる。
「開幕前には大嶋も僕も、それぞれ個々に別々のメニューを分担しながらやって行なったのですが、その中で彼のドライビングスタイルが自分とそれほどかけ離れたところにあるわけではないな、ということは分かっていました。テストからの流れとして、チームの雰囲気も良くなっているのも感じていましたし、今までよりもさらに手応えを持ってシーズンを心待ちにしていました」と伊藤。
しかし、開幕戦岡山まで1カ月となったところで起きた東日本大震災の影響で、開幕戦の岡山は順延となり、進めてきた開発の最終チェックの場となる合同テストもキャンセル。しかしながら、事実上の開幕戦となったゴールデンウイーク開催の富士に向け、山田健二エンジニアは充分なシミュレーションを行ない、準備を整えていた。
「基本的にローダウンフォース仕様で戦う富士ですが、TRDからは新しいパーツなどの供給を受けていますし、チーム独自に昨年からさらに進化させたエアロパーツも持ち込みました。新パーツはデータもなく未知数ですが、不安はありません」
ところが、レースウイークを前に気になる情報があった。日曜の決勝日の天候が崩れる可能性があるというのだ。
「オフのテストの状況では、ライバル勢が履くタイヤメーカーが、いわゆる“ちょい濡れ"と呼ばれる『ダンプコンディション』では非常に速かったんです。週間予報ではそれほどまとまった雨にはならなそうなので、その点でちょっと心配はしています」と、山田エンジニア。過去何年にも渡って雨のレースとなったことがなく、『晴れの特異日ではないか』とも言われるゴールデンウイークの富士だが、この点だけが山田エンジニアの心に引っかかっていた。
合同テストのキャンセルを受け、特別に金曜からの走行となったレースウイーク。習熟走行2回のセッションでのENEOS SUSTINA SC430は、1回目が大嶋のマークした1分35秒113、2回目は伊藤の刻んだ1分34秒801がベストタイムで、でともに3番手。今季注目の最強タッグが好発進を果たした。
「今回大嶋が予選を担当するということで、いつもとは違う雰囲気で自分も金曜から臨んだのですが、どうすれば彼の速さを引き出せるのかをメインに考えながらチームとしてもメニューを進めました。方向性に関して、彼にちょっと迷いが生じたときに間違った方向へ行かないよう、きちっと自分が導いてやれるようなパートをこなそうと務めたつもりです」と伊藤。「良い意味で大嶋の走り方と僕のスタイルは非常に近いところにある。それでいて、僕らの走り方が山田健二エンジニアのスタイルとも近いところにあることで、うまく回っている感じがします」
まずまずの流れの中で迎えた土曜の公式練習。だが、天候はどんよりと曇り、明らかに前日よりも悪化している状況だ。午前9時10分からのセッションで、ENEOS SUSTINA SC430が大嶋のドライブでコースインしたのは午前9時25分。細かいピットイン&アウトを繰り返しながら、コンスタントに1分34秒台でラップを重ねつつ、タイヤの評価とセットアップを進めていく。セッション後半は伊藤がドライブし、さらにセットアップは進む。
結局このセッションで、ENEOS SUSTINA SC430は1分34秒587で10番手。ENEOS SUSTINA SC430とは異なるタイヤを履く#46 GT-Rがただ1台1分33秒台をマーク、不気味なライバルの存在が明らかとなるも、午後の予選に向けての準備が終わった。