
第7戦オートポリスではタイヤかすを拾ってしまい、本来のパフォーマンスを奪われてしまうという予想外の問題に苦しめられたLEXUS TEAM LeMans ENEOS。苦しみながらも続けてきた連続ポイント獲得もストップし、さらにタイトル争いへの可能性も失うという痛手を受けた前大会から2週間。ついにシリーズは今季最終戦ツインリンクもてぎを迎えた。
1年前を思い起こせば、タイトル争いの当事者として臨んだ今大会。あのときと同じツインリンクもてぎという舞台に際し、「タイトル争いに絡んだ状態ではなく迎える最終戦ということで、やはりどこかひとつ要素が欠けているということが残念ですよね」と伊藤大輔は語った。
「だけどその一方で、ここまで思うような結果が残せていないだけに、ここでどうしても勝ちたい、良い形で今シーズンを締めくくり来季に臨みたいという思いはありますよね。タイトル争いのプレッシャーではない、また違ったプレッシャーを自分の中に秘めて今回もてぎにやってきたんです」
その思いはLEXUS TEAM LeMans ENEOSの全員にとって共通のものであった。
「もちろん最終戦は勝ちを狙いにいきます」と山田健二エンジニア。
「そしてもうひとつ、このもてぎで重要なポイントとなるのが、ここまで思うように戦うことのできなかった原因を見極めて、すっきりした状態でオフシーズンを迎え、そこでの開発の方向性を再確認するということです。今季はレースウイークが不安定な天候に見舞われることが多く、残念ながら我々はタイヤの面で天候に翻弄されてしまった印象がありますしね」。
しかし、迎えた走行初日。土曜のもてぎは朝から雨模様。午前9時45分から始まった公式練習も、降りしきる雨の中ENEOS SUSTINA SC430はウエットタイヤを装着しての走行となった。ここでは伊藤がイニシアチブをとって精力的に周回を重ね、複雑に変化するコンディションの中、約1時間を費やしてタイヤ評価とセットアップを進め、残り30分となったところで大嶋和也に交代。最終的に9番手ながら、フィーリングはまずまずで順調な滑り出しを見せることに。
そして午後1時05分から行われた予選1回目には、相変わらずのウエットコンディションの中、まず大嶋が混走時間帯に基準タイムのクリアとセットアップの確認を行うと、GT500の占有時間帯にアタックを担当する伊藤にスイッチ。コースアウトするマシンが散見される難しいコンディションながらも、細かいセットアップ修正をこなして混走時間帯を終えた伊藤は、満を持してラスト10分間のGT500占有時間帯に臨む。雨はやや小康状態となっている。
セッションが始まると、早々にアタックに向かったENEOS SUSTINA SC430。「土砂降りになってしまうとQ1落ちという恐れもあったので、水の少ない状態のうちに早めにアタックに入りました」と振り返った伊藤は、計測2周目に1分54秒171の好タイムをマーク。その後は他車のスピンによって黄旗区間が発生するなどもありタイム更新できなかったENEOS SUSTINA SC430だが、無事7番手に入り、上位11台に許されるQ1突破を果たす。
そして迎えたQ2。相変わらず続くウエットでのアタックに、LEXUS TEAM LeMans ENEOSは10分間と短いセッションながら、2セットの異なるウエットタイヤを投入、2アタックで確実にQ3進出を勝ち獲るという戦略で臨んでいた。ミディアム、ソフトと異なるタイヤでワンラップアタックを2回トライすることで、続くQ3に向けたデータ収集にも繋がる上、Q2突破もより確実なものとなるとの考えだ。
午後3時10分、Q2のセッション開始と同時にピットアウトした伊藤は、ゆっくりとタイヤを温めると、いよいよ計測ラップに入る。1コーナーに進入した伊藤には、好タイムにつながる手応えが既に感じられた。
「いける……!」と伊藤が思った次の瞬間、2コーナー立ち上がりで4速にシフトアップしたつもりが、突然ギヤは5速にジャンプ。伊藤が異変を感じたその直後、4速にダウンしたところギヤはそこから上がらなくなってしまう。さらに3コーナーに向け2速にダウンしたところ、ついにギヤはそこで動かなくなってしまった。
失意のまま2速ホールドでピットに戻った伊藤。スタッフたちがENEOS SUSTINA SC430に取り付き、必死で修復を試みるが、原因は当初疑われた電気系ではなく、予想以上の重傷であることが判明。チームは無念の思いでENEOS SUSTINA SC430をガレージに押し戻すことに。ENEOS SUSTINA SC430はそのままピットアウトすることはなくまさかのノータイムとなり、10番手という結果でQ2敗退となってしまう。Q3での出番を信じてピット内で状況を見守っていた大嶋は、無念の表情でその場を離れ、伊藤も無言でコクピットを降りる。
「ひさびさに今日はQ3までいける手応えはありましたし、自分自身今季一番の“ゾーン”に入っている感覚があっただけに悔しい……」と伊藤。山田エンジニアとしても「これまでに経験したことのない箇所の、ギヤボックス関係のトラブルです。伊藤選手はもてぎが得意ですし、公式練習でいろいろなセットをトライして、どんな雨量になってもQ3で良いポジションを狙えるという自信があったのですが……」と悔しさを滲ませたが、伊藤、大嶋、そして山田エンジニアは異口同音に、気持ちを切り替え、明日の決勝での追い上げを誓ってサーキットを後にした。